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三重県文学ブログ

三重県、特に伊勢市の文学に関すること。時代は江戸~戦前。

大正三重雅人史、俳句部分抜き書き

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大正三重雅人史、俳句部分抜き書き


ブログさぼってましたが、明治大正の俳句史に関する本を読んでました。あと、耕雨の展示でなぜか耕雨じゃない短冊が交じっていたので差し替えました。

耕雨前後の全国の俳句史の本を読んだので、次は三重県のその時代の俳句の状況を三重県の本から抜き出してみます。

まずは『大正三重雅人史』。耕雨没の翌年の大正五年出版です。
当時存命の文芸に関して名のあった人の人名事典ですが、前半のページに当時の文芸の傾向が書かれています。
以下、抜き書き



八、俳句界の傾向

所謂平民文学の称のある俳句は、県下到る所に於て行はるゝを見る。但し其の価値は果して向上せりや太だ疑問なり。而も其信仰者を増加せる点に於ては疑問の余地なきを察するなり。試みに之を数へんか、鈴木吟圃、竹内琴涯、本山山雅、森島苔青、長谷川可同、前川素泉、植村浦人、中西柯客、守田定愛、東郭川、土井芹丈、西村天桂、近木渚萍、水原蓼川、貞木句之都、竹内可笑、清水鹿声、長井哀耳、糸川片々桜、鈴木竹舎、東把月、浜田椿堂、村田香汀、前田田敬、潮田青邨、太田楽鶯、片岡白華、大谷吟月、河原松声、土井淇水、林十華、藤門暁月、門脇可遂、葛山葛山、六田犬酋、杉森梅整、山田梅梢、中村杏雨、中井社楽、中須狂水、西村白扇、嶽尾掬水、村田素泉、麻谷鶴年、林半渓、田中静水、鈴木鬼水、石川八十瀬、岡本梁村、守田東窓、山本勾玉、中山忘帰、西村既酔、久保田秋雨、池村物下、小竹耕雪、奥阪薫風、田宮圭虫、上田菁々、伊東河貝子、伊藤瓢石、磯部荻村、三輪笠亭、中井碧山、山崎右竹、関口鶏野、松蔭玉水、矢田員栖、野中杉堂、森香果、大西逸山、津田百水、伊藤樗石等を始めとし幾百名なるや枚挙に遑あらず。此俳句界の現状に対して我友砂郎漁隠特に一書を寄せ来る、掲げて現状の一部を窺知せんとす。敢て編者の確信とする勿れ、而も俳界の事情を穿てりとみるべきなり。

県下現俳壇管見 砂郎漁隠(節録)
◎旧派
近古に於て蔵中、静立、素問逝き果樵去り、夭節、梅有物故し、最近海内屈指の耕雨白玉楼中の人となりて、為めに県下旧俳界の寂寥を痛切に感ずるに至れり。且つ紀北に於ける、功労者にして先輩なる、山猿雪寃の機なく、恨を抱て過労病魔の為めに、黄泉の客となり、為めに遠近の有志及俳人が同情悼惜の焦点となれるありて、一入其感慨を深ふするものあり。
只僅に、椿堂、淇水、可同、梅整、物下其他四五の余喘を保つあるも、梅整は曩日「鈴鹿」発刊当時の元気なく、可同、淇水は資望に隠れて、僅に老俳の名を存し、物下素より飛雄の力量を欠く。椿堂多少の活気あるも而かも、我門下を糾合するに汲々乎として、弘く県下俳壇の為に尽瘁統一を画するの信望と力量に乏しきをを遺憾とす。其他芹丈、田敬、青邨、杏宇、百水は其力量を発揮するなく、徒らに隠君子否老俳家と称するの外ならんか。社楽、楽鶯は売名に余念なく、只弘く風交するの能あるのみ。
香汀、十華、暁月、可遂、葛山、犬酋、梅梢、白華、吟月、苔青、可笑、素泉(村田)半渓等椿堂門に籍を措き一部の俳人にのみ知らるゝ所謂俳人のみなる哉。墨守党のみ亦論ずるに足らざるなり想ふて茲に到る、斯界の為めに多少の哀愁を禁ずる能はざるなり。
◎新派
日本派中央俳壇に雄飛せし、句之都医学士あるも、病院裡劇務の為に其薀蓄を傾注するに由なく。子規居士に親炙せし勾玉あるも、杳としてきくなし。磨剣、寒骨亦他に去て知るに由なし。不考郎朝鮮にあり頻りに実業界に発展活動しつゝあり。熊野には右句之都の外、山雅(鬼涯)あり(現県会議員)万朝俳壇の驍将にして温厚の君子人なり。柯客は「鯨」時代には大阪の俳人に伍して海内に雄飛せしも、今教育界に隠れて曩日の覇気毫もあるなし。天桂は曩に四中奉職当時山田の俳人を網羅し且つ県下新派を糾合したる鉾杉会の牛耳を執て俳誌を刊行したりしも、郷里の神官に聘せらるゝに至りて意気衰退せり。郭川は米国に於て奮闘苦学の経験あり、帰朝其資を以て悠然学究に余念なし。曩に浦人片々楼と共に俳誌を出し、熊野の俳界に貢献せり。哀耳は専ら新傾向派に立脚して作句の精力喫驚に値するものあり。素泉(前川氏)は曩に神戸市場金融界に重きをなしたる搢紳にして、傍ら俳句に努力海内の選者に伍したる関西句界の一猛者なりしも蓄財帰村してより、優々自適又名聞を欲せざるものゝ如し。其他北西に鹿耳あり、伊賀に梁村あり、鈴鹿の東麓関駅に八十瀬、笠亭あり、松阪に東窓あり其他到る所結団ありて、窃に研究しつゝあるも、然かも何れも意気消沈、溌剌たる昔日の活気横溢の観あるなし。現下県下の新派句界は渋滞し恰も秋夜沈々の状にも比すべし。只僅に深伊沢、阪手、尾鷲、赤羽、二郷など一局部に其余光を認め得らるゝのみにして、又曩日旺盛の壮観に比すべき機の到来を期するや久し矣。

 

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